墨には五彩あり
足立美術館での“心に響く言葉”第2弾です。
第1弾では、横山大観をはじめとした近代の日本画において気になった画題「猿猴捉月」について、その読みや隠された意味について綴りました。
今回は、数多く展示されていた近代日本画の中で特に素晴らしいと感じた横山大観の“雨霽る(あめはる)”について調べてみました。
霽る(はる)とは、晴れるや憂いや悩みが解消する、心がはればれとするといった意味を持つ古語のようです。
資料によると、「雨霽る(あめはる)は大観の集大成とされている山海二十題の中の一作で、雨上がりの山々を描いた大観の水墨画の中でも五本の指に入る名作です。
水墨画は、鎌倉時代に禅とともに中国から伝わり、日本独自の風土から得た情趣が盛り込まれ日本ならではの発展を遂げてきたとあります。
また水墨画は、線だけではなく墨の濃淡や明暗を使用し、主観的なものを表現したものだそうです。
降雨の後に晴れ渡る山並みの流動感を描いたこの作品は、紀元2600年という奉祝を意識したものとされていて、大観が日本そのものを深く思う気持ちが伝わってきます。
そして、大観が愛してやまなかった富士山が彼方にそびえる姿と、手前の山並みの中ほどに僅かに見えるお寺の塔に、大観の人間らしさが見えます。」とありました。
覆いつくしていた靄が少しずつ消えていく様子が迫力を持って描かれ、何とも言えない静けさや明るさそして時の動きを感じさせます。
手前から徐々に姿を現す山々の向こうに雄大な富士が晴れ晴れとした心を見守ってくれているようにも感じます。
ですが、“雨霽る(あめはる)”を見ていると何やら色彩的なものも感じ空間の奥行や色彩的なグラデーションも感じるようになってきました。
展示の解説欄に「墨色に五彩あり」と書かれており、非常に気になった“初めて知った言葉”です。
・墨色に五彩あり
墨色には万物の色彩が含まれ、「墨には五彩あり」と言われます。「墨の五彩」とは、濃、焦、重、淡、清。
水墨画の先達たちは、「色を以って墨光を助け、墨を以って色彩を顕す」、「色は墨を妨げず、墨は色を妨げない」、「色の中に墨あり、墨の中に色あり」という言葉を残しています。
この意味には諸説あると思いますが、一説には、墨の濃い、薄いだけで表現する事で描いた人の思いや、見る人の気持ちでいろいろな色に変化する事と言われています。
といった深い意味があるようです。墨の濃淡やその調和、対比で表現する水墨画に、静かさや豊かさを見たような気がします。
黒という色の中に、自分の気持ちで色を付け彩るその凄さに、また墨と色彩に品格を持たせた素晴らしさを感じました。
知らなかった物事を発見しその本質を確かめ、自分の気持ちに色を付け彩る、これからのテーマにしていこう!
テーマはまさに「墨には五彩あり」。